傷だらけ父さんのHappy Life Journey -難病をバイタリティに変える生き方-

30代半ばにして小中学生2人の子供の父親。遺伝性の難病(マルファン症候群)による大動脈解離や複数回の大手術で体は傷だらけ。そんな傷だらけ父さんが、闘病記と、経験談に基づく”難病であることをバイタリティ(活力、希望に向かって進む力)に変える生き方のススメ”を紹介します。

大動脈解離 B型 ⑥人生2回目の大動脈手術(遠位弓部下降大動脈置換)

 自身の2回目となる大動脈の手術は、遠位弓部下降大動脈という箇所だ(写真の青四角部分が今回の手術で人工血管に変わった部分。置換手術前の拡張した状態の大動脈については→コチラ)。大動脈の頭と両腕にいく分岐部分を超えた辺りから横隔膜あたりまでに伸びる範囲で、わかりやすく外から表現すると肩甲骨の裏あたりからみぞおちの辺りまでの範囲の大動脈を人工血管に換えることになる。この部分の大動脈の直ぐ近くには脊椎がある。その為、この遠位弓部下降大動脈の手術は難易度が高く、重い後遺症がでるリスクもあると聞いていた。

f:id:mrs-yaman:20200504225344j:plain

 ただ、大動脈解離(B型)を発症してから3ヶ月でこの箇所の大動脈(解離性大動脈瘤)の直径は53mmを超えていた。通常は500円玉くらいの直径と言われる胸部大動脈が裂けて危うい状態でコーヒー缶を超える太さと大きさまで拡張していると考えると、体の中に時限爆弾を抱えて生きているとしか思えなかった。手術のリスクがあるとは分かった上で、早くこの裂けた大動脈を取り除きたかったし、日頃の生活で苦痛だった足の痛み(間欠性跛行)とお腹が常に具合が悪いこと(虚血)が良くなるのであるならと、手術を受けることに迷いはなかった。またドクターを信頼して任せる覚悟はできていた。

手術前入院 

 手術の4日前から入院して諸々の術前の検査や準備をした。手術前入院の間には、採血、新エコー、心電図、レントゲンなどの検査があった。また、この病院では手術に向けて自分自身で体毛をバリカンで剃処理をした。今まで手術を経験した時は基本的に体毛は手術時に処理されていることが多かったので自分で事前処理するのは珍しかった。そのシャワー室でできる範囲を自分自身で剃る作業は意外と体力を使い、疲れた。

 手術前入院の経験から、これから大手術を予定される方におススメしたいことが一つある。それは“呼吸の練習”を手術前にしっかりとしておくことだ。大動脈解離で緊急搬送されたときは、肺の機能が弱り、回復もなかなかせず辛い思いをした(その時のICU~入院治療の記録は→コチラ)。その辛い思い出もあり、手術前入院の間に病院で渡された呼吸訓練機を使い、その期間中にしっかりと呼吸(息を吸い込む)練習をした。その甲斐もあって、今回の手術後には肺に関わるトラブルは全くなく、スムーズに回復することが出来た。ちなみに、今回の2回目の手術から2年半後に3回目の大動脈手術を経験するのだが、その時も手術前入院する前から自宅で呼吸器訓練機を使って練習した。3回目の大動脈手術では手術中に肺に穴が開くなど肺に負担は多くかかったが、手術後は呼吸・血中酸素濃度のトラブルはなく、順調に回復できた。この経験から、この呼吸訓練機を使った呼吸練習を強くオススメする。

 ちなみに手術内容については事前に心臓血管外科の執刀医から聞いていたので、手術前入院の時はドクターが様子を見にきてくれる時に少し話しをしたのみだった。ただ、入院初日に、このドクター(執刀医)との会話で今までの循環器内科のドクターとの違いを強く感じることがあった。それは血圧に対する考え方だ。

 執刀医はその時に服用している降圧剤と、その時点の血圧の値を聞いて驚いていた。私自身も血圧が低く抑えられていてめまいを感じていたので、飲む量が多いのではないかとは感じていた。ただ、安静と血圧を抑える必要がある大動脈瘤を抱えている身なので、その拡張や破裂リスクを抑えるにはやむなしと考えていた。ただ、執刀医は少し違った。「めまいが出るほどは抑えすぎだ。」と考えていた。なお、この時から2年半後に3回目の大動脈手術を受けるのだが、その病院の心臓血管外科のドクターらも基本的には降圧剤で血圧を低く抑えることや、目安にする血圧に対する考えは内科医とは違った。

 今まで、自身の大動脈解離、大動脈瘤に関して多くのドクターと話したり、治療を考えてきたが、内科医は、”薬によって病気を抑えたり、治そうとする”。一方で外科医は、”手術や技術で病気を治そうとし、薬は最低限で十分と考えている“。と感じている。専門を考えれば当たり前かもしれないが、同じ大動脈瘤といっても話す相手によって治療方針は変わるのだろう。この経験もあり、積極的に自身の病状に合わせた治療について調べたり、その治療を得意とする病院を探すようになった。この経験については後日「良き患者であるススメ」シリーズで別途紹介していきたい。

手術当日 

 大動脈解離を発症してから約3か月半後の2017年10月末日の午前10時ころ、奥さんと実家から駆けつけてくれた家族に見送られ手術室に入った。前回の大動脈基部置換の手術から14年ぶりの大手術だ。手術室までは歩いて行き、手術台にも自分で横になった。

 まず手術台の上で尿カテーテルを入れる事となったが、これが痛い。その上、なかなか上手く入らなかった。予想はしていたが、早々に諦めて麻酔で眠りに落ちた後に入れてくれることになった。そして、酸素マスクをつけ、腕に刺した点滴から麻酔が入ると数秒で眠りに入った。

 前回の大動脈の手術と同じで、麻酔が覚めてICUで起こされるまでは真っ暗闇だった。今回も夢をみることも、幽体離脱することも何もなかった。

 ちなみに今回も前回の大動脈の手術と同様、心臓を止めて体温を17度まで下げて手術をした。人生で2度心臓が止まっている。そう考えると、色々な困難や出来事も、ちょっとやそっとの事では物怖じなくなる。そうそう怖いこともない。”助けてもらい、生き長らえたこの人生、あとはやれる事を精一杯やるだけだ“ と。

 

今後、同様の手術を受けるかもしれない人の参考になれば、大きな手術だけれど、乗り越えて元気にしている私みたいな人もいると励ましになればと願い、手術概要を下記にまとめる。

手術概要

病名: 遠位弓部下降大動脈瘤

(胸部大動脈の最大径は5.3㎝ マルファン症候群も考慮して手術適応) 

手術名: 胸部大動脈人工血管置換術

手術方法: 

左胸を切開(20cmほど)して開胸。

足の付け根(鼠蹊部)も小切開。

人工心肺にして、全身冷却。心臓を化学的に止める。

脳・脊髄保護の為、超低体温循環停止法のもと逆行性脳循環を実施。

その間予定箇所を人工血管に置換。

分岐(脊髄に血液を送る肋間動脈)を再建。

全身加温、心臓を再び動かし、人工心肺を外して閉胸。

 

手術時間: 8時間ほど

術後の後遺症: なし

Copyright ©傷だらけ父さんのHappy Life Journey -難病をバイタリティに変える生き方- All rights reserved.